中村正幸句集『絶海』共鳴句抽出

「深海」の中村正幸主宰が第四句集『絶海』を上梓された(文學の森、平成26年1月)。
氏は「たのしさが私の行動原理であり、この楽しさに後押しされて俳句を作りつづけてきた」と言う。内容もその通り。読んで楽しい作品が多い。着眼がユニークで、もののいい回し方が抜群にうまい。早速作品を眺めてみよう。


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007 咲くやうに結ばれてをり初みくじ
008 おはじきの一つ一つに丸き冬
026 てのひらの裏も表も小春かな
032 やはらかく咳して語りはじめけり
041 指入れて手袋に意志生まれけり
065 ぽつぺんと鳴り出しさうなゑくぼかな
100 紙風船おまけの息を入れ渡す
104 膝といふ母艦を子猫離れけり
146 蟻騒ぐ死に水ほどの一滴に
177 絹の上ころがる声や河鹿鳴く
182 雷一つ省略のよく効いてをり
140 鳩吹いて防人のごと淋しがる
242 一つぶが箴言となる黒葡萄

しかし、特徴的なのはレトリックの点だけではない。如何にも、対象を良く見て、作者なりの感受を完成させていると思わせてくれる。例えば次の句である。

015 ていねいに足跡置きぬ雪の道
032 やはらかく咳して語りはじめけり
041 一本の竿の青さへしぐれ来る
098 白魚の群がる数の濁らざる
112 鶯餅食ふ難しき貌をして
128 花冷や火の匂ひなき火縄銃
143 灼くるだけ灼けて踏切鳴つてをり
169 美しき放物線や早苗投ぐ
170 浮世絵の雨は棒線藍浴衣
173 昼寝子の指が絵本をはなしけり
215 不揃ひの墓の高さや雁渡る

 ご本人が俳句が愉しく仕方がない、と言う意味のことを書かれるだけあって、この句集を読む我々も愉しい。句集名『絶海』からは、重々しい場を連想するが、内容はかなり平穏である。市井人の日常の幸せに繋がっているようだ。

062 手毬唄忘れ少女にもどされる
064 冬麗の真綿のやうな睡魔かな
087 手品師の帽子つぎつぎ春を出す
106 うららかや叩いてどかす牛の尻
161 目薬をさし万緑をあふれしむ
203 銀漢の尾に産声の届きけり
226 歌口に水含ませる無月かな
243 手にひびく赤子のおなら天高し

 中村正幸氏の自選10句と私のあらかじめ選んでいた句とは、次の5句が一致していた。

106 うららかや叩いてどかす牛の尻
007 野の色のうるみ出しけり七日粥
183 人に振るハンカチいつか我に振る
245 八月を見つめつづける柱かな
064 冬麗の真綿のやうな睡魔かな

 愉しい句集を有難う御座いました。

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