『大澤弁護士の俳句事件簿』を読んで

 弁護士の大澤孝征さんは俳人(戸恒東人主宰「春月」の同人)でもあり、篠笛も吹かれる趣味人。先に句集『夏木立』を上梓され、鑑賞する機会をえた(このブログにあり)。その中に、著書『大澤弁護士の俳句事件簿』のことがあり、興味を覚えた筆者は、大澤さんに一冊無心した。早速読ませて頂いた。


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 大澤さんは一九四五年、神奈川県生まれ。一九六九年に早稲田を出て、その年に司法試験合格。七二年検事任官、東京・宮崎・横浜をまわり、七九年に弁護士登録。大澤弁護士事務所を開設。
 特記すべきは、氏が犯罪被害者保護をライフワークとして志向しておられることである。加害者に対しては厚い保護が法的に約束されているのに、理不尽な犯罪の結果の被害者に対しては、往々にして、一般社会の無関心、あるいは無慈悲で理不尽な扱いが待っている。氏はこのような現状を問題視し続け、被害者保護の活動を展開されておられる。テレビにも出演しておられた。ほか、篠笛演奏、歌舞伎にも精通するなど、幅広い活動が、この著作のベースとなっている。犯罪や係争といった一般人があまり遭遇しない場面が、俳句とともにこの著作に出てくる。
 初出は雑誌「俳壇」。二年半連載したものに、六篇追加し、全部で三十六話からなっている。各編読みきりになっており、読み易い。

 筆者が感銘した話は数多いのだが、例えば、市川海老蔵が元暴走族から顔面を殴打され、骨折などの重傷を負った事件があった。筆者を含めて世間では、海老蔵側に非難めいた感情をもった。例えば、多額の金を出して示談にしたに違いない、などと下種の勘繰りをした。あくまでも被害者は海老蔵である。なのに世間は、海老蔵の方が著名人でお金持ちだろうから、そんなこともあったに違いない、と無責任な想像をする。氏の話を読んで、世間一般の習慣的発想がいかに理不尽であるかを思い知らされたのである。
 裁判に運や不運があること、人と人の縁を辿っての解決方法もあること、不倫解消の示談沙汰では、いかに女側が精神的に強くて男が情けないか、いろいろ教わった。麻薬関係では、海外で不用意に掴まされた大麻を、捨てるに捨てられず、そのまま持ってきてしまって入国時に見つけられた新婚夫婦の話。全く無実のふたりが、弁護士・検事・裁判官の温情により、彼の会社に露見してしまわないうちにスピーディに法的処置がなされた事件など、結構人情的な話もある。
 結婚詐欺師のキャラクターが面白い。なんでこんな風采の上らない男が常習的結婚詐欺師であって、被害者は美人ばかりなのか、という疑問に答えてくれる。

 変わったところは、各ストーリーに俳句が挿入されていることである。弁護士は仕事柄、悪の味方だと非難されることもある。そんな時の一句。
  春愁や悪の味方と謗らるる    鷹雪(大澤氏の俳号)

 是非、一読をお勧めする(本阿弥書店、平成二十六年六月十日刊行)

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