田吉明句集『既視海峡』

 田吉さんが表記の句集を出された(霧工房、二〇一六年一月三十日刊行)。第四句集である。不用意に「句集」と書いたが、通常の意味での句集ではない。作品は、「題」と二句もしくは三句が一組を形成して一作品となる。だから、氏はこれを「組曲」と呼んでいる。重要部分を構成する「句」は必ずしも「俳句」の定義を厳密には守っていない。しかし、短い定型的「詩」であることは間違いない。それらが、「題」と呼応しながら、えもいわれぬ妙味を醸し出している。
 その「句」は主にたおやかな大和言葉からなっており、氏が京大の文学部の国語学国文学教授であられたことを考えると、用いられている一語一語に正統な「みやび」と沈着した時の重さを感じさせられる。


画像



 幾つか例を上げよう。

鷹の羽 elegia
 汝が塔は悲の黄落のなかに立つ
 汝が塔は我が黄落のなかに立つ
 遠き月夜に鷹の羽ひとつ拾ひしこと

霧の塔
 夜の塔は霧の向うで灯すだらう
 霧の塔へますぐの道が届くだらう

 月のない夜の柩が通る枇杷の花

雪女
 夜の塔のこのさき白き夜ばかり
 不仕合せな指がゆびきりする暮雪
 不仕合せな指がえがいてゐる雪文字

 雪女 どの夜からもふりかへり


 一行からなるものもある。但し「題」は付いている。


 つくつくぼふしみんなやさしく死ににけり

春燈
 春の闇から汝れはも濡れて春の灯に

 ユニークな作品で一杯である。「詩集」というべきか、しかし「俳句」の味を兼ね備えている。このようなジャンルも広く認知されるべきであろうと、氏の「句集?」を詠むたびに思うのである。スエーデンのノーベル文学賞受賞者故トーマス・トランストロンメル氏の「俳句詩」を思い出させる。
 筆者(=栗林)は、田吉さんの別の「句集?」『憂愁平野』をこのブログ(2014年12月18日)に取り上げている。

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